毎年、夏休みのお盆の時期は、

決まって家族で父の実家のある玉川へ遊びに行った。

玉川というのは松野よりもさらに奥で、やはり安倍川沿いにある。

父は５人兄弟だったので、親戚の数も多く、いとこも多かった。

この時の一番の楽しみといえば、やっぱり夏の夜の花火だった。

父の実家は、坂道から３メートル程高い所にあるため、花火をやるには、最適の場所だった。

だから僕はよく、同い年の、みっちゃんと二人で、ひいちゃんや、るみちゃんや、しょうこちゃん、

たあちゃんや、 のりこを引き連れて「うまさん」という店まで花火を買いに出かけた。

実は、僕は前から花火を使って、ある実験をしたくてしょうがなかった。

ある晩、その夢がついに実現した。

花火はすべて終わってしまったように見せかけて、みんなが家の中に入るのを待った。

外に残っているのは、僕たち男三人だけだった。

みっちゃん、たあちゃん、そして僕。

僕は隠しておいた４０本のりゅうせい花火を二人に見せた。

二人とも驚いていた。なぜなら２０本ごとに導火線をうまくまとめ、一本につなげてあったからだ。

「俺、今からこれを持って、空を飛ぶんだ！」

「コーラのビンに入れないと危ないよ！」

まだ３年生のたあちゃんが不安そうに言った。

「大丈夫だって。あんまり飛びそうだったら、ここに着地するから。」

そう言って、僕はみっちゃんと下に降りた。

準備ＯＫ！

僕は、両手に２０本ずつ、りゅうせい花火を持った。

自分が気持ちよく空を飛んでいる姿を想像していた。

この実験は、絶対成功する、という自信もあった。

「じゃあ、みっちゃん、頼む。」

みっちゃんはうなずくと、両方の導火線に同時に火をつけた。

僕は、両手を上げ、離陸態勢に入った。

徐々に火がりゅうせい花火に近づいていく。

夢の実現までの秒読みが始まる。

「三、二、一・・・。」

次の瞬間、いっきに４０本のりゅうせい花火に火がついた。

「あっちい！」

ものすごい熱さだった。僕は、反射的に両手をはなしてしまった。

すると、４０本のりゅうせいは、まさに竜のように四方八方に飛びかかった。

壁にぶつかるりゅうせい、屋根をこするりゅうせい、隣家を襲うりゅうせい、地を走るりゅうせい、

お茶工場のガラスにぶつかるりゅうせい、そして、実家を襲撃するりゅうせい。

異常な物音に、驚いて出てくる親戚の衆。

僕たち三人は、ものすごく怒られた。

もちろん、僕が一番どなられた。

こうしてロマンチックな夜は、さんざんな夜へと変わってしまった。

自信がある時に限って、うまく行かないという僕の人生は、この頃からすでに始まっていた。