彼を知らない人は、全国にもういないかもしれません。

　それほど有名になった「米村でんじろう」さん。

　彼は元都立高校の教師でした。

　私が初めて彼を見たのは１９９７年。もう十年も前のことです。

　ＮＨＫのドキュメンタリー番組でした。

　番組では、まだ無名の米村さんが退職する最後の一年間を取材していました。

　その番組の中でのインタビューは、強烈に頭に残っています。

　こんな会話でした。

　記者　「米村先生、いよいよ退職ですが、今の心境は？」

　米村先生　「科学の不思議は、小さいうち、できれば小学生に伝えていきたいです。」

　記者　「米村先生の授業はどうですか？」

　生徒　「こんなへんな実験よりも、入試に出る勉強をやってほしい。」

　記者　「先生、この３月に学校をやめるようだけど、どう思いますか？」

　生徒　「別に、いいんじゃないですか。」

　 　あの時の米村さんの熱い思い、それに対する生徒たちの冷めた言葉。

　あまりにも対照的な姿にびっくり。

　この時、「米村でんじろう」という名前が私の心に残りました。

　 　 　あれから十年。

　今、ＴＶで見る米村さんの、生き生きとした姿を見ると、とてもうれしい。

　やりたいことを実現させるのは、想像以上に、たいへんなことです。

　米村さんだからこそ実現したのかもしれません。

　いくつになっても、夢に向かって一生懸命生きていきたいと思います。