「このあと、リレーもあるから、まだだいじょうぶだよね。」

「何言ってんだ。もし、この応えん合戦で負けたら、赤組の負けは確実だ。」

ぼくは大声でさけんだ。現在、白２０２点、赤１９１点で赤組が負けている。

その差は１１点。何度も地面で計算をして確かめた。まちがいない。

　応援合戦が始まった。勝ってる白組からだ。

たいこが鳴り始め、Ｎ君、Ｔ君がばく転をした。

中央の赤と書かれた紙が破られ、白組の団長、Ｙ君が姿を現した。

「赤組、破れたり！」

すごい。白組のオープニング。早くも歓声があがった。

やばい。いやな予感がする。団員たちも笑っていたが、その顔は少しひきつっていた。

エールに応援歌、そして呼びかけと白組の応えんはどんどん続いた。

中身の方は、最初ほど強れつではなくて、少しほっとした。

そして、そろそろ終わりかな、と思った時、とつ然、白組のＭさんが倒れた。

おい、どうしたんだ。だいじょうぶか、と心配になった。

白組の連中が、かけよっていった。

そしたら、いきなりＭさんが、ぬっと立ちあがった。

「芸能人は歯が、白い。」

一しゅんのちんもくのあと、ばく笑のうずだった。

なぜかＭさんの歯が、やたら白く見えた。

　ぼくたち赤組は、もはや絶体絶命だった。ぼくはかくごを決めた。

「続いて赤組の応えん。用意、パーン。」

気持ちいいほどピストルの音が、ぼくの体をつきぬけた。

「赤組応えん、いくぞ。」

ありったけの声でさけんだ。 ぼくたちにもう後はない。

負けたら白組の優勝なんだ。 みんなも必死だった。

今までのことが頭に浮かんできた。応えん団の希望者が多く、たいへんだったこと。

やっと団長になれたこと。 夏休みに集まって練習したこと。

低学年の指導に苦労したこと。 そして、それは浮かんでは消えた。

いよいよ応えんも終わりに近づいてきた。

ぼくたち赤組最後のきり札、ＣＭシリーズのスッパマンだ。

白組に負けず、スッパマンのげきも、ばく笑のうずだった。

　応えん合戦の結果発表。どきどきしながら耳をすませた。

「白組２４５点、赤組２７５点。よって赤組の勝ち。」

勝った。勝ったんだ。

この結果、ぼくら赤組は白組に１点差に追いついた。

あとは最後の種目、松野っ子リレーで決まる。

「さあ、このまま優勝するぞ。」

ぼくはみんなの間を泳ぐように、入場門へ向かった。