最近、女子便所が混んでいると、男子便所を使うという、女性を
見かけるが、その姿をみて、ある出来事を思い出す。
中学３年生の修学旅行、僕らは京都へ行った。マンモス校だった。
二日目のことだ。旅館での朝食の後、用を足しに便所へ駆け込むと、
すでに、男子便所は、満ぱん。両方の戸も閉まっている。
旅館の便所は小さく、大は２つしかなかった。
僕は、おなかの調子が悪くて、がまんしきれずにいた。
ちらっと、となりの女子便所を見ると、誰もいない。
（俺は、調子が悪い。みすみすこれを使わないのは、愚かだ。）
すぐ、そう思った。そして、拝借しようとすると、
「おれも、我慢できない。」ともう一人の友だちも入ってきた。
２つしかなかったトイレを二人で借りた。
内側から、鍵をかけて、安心して用を足し始めた。
ところが、外が、にわかに騒がしくなってきた。
女の子たちが、集団で、トイレにやってきたのだ。
（どうしよう。今出たら、絶対まずい。）
この時、もう一人の友だちもそう思ったにちがいない。
外の女の子たちの話が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だった。
その中に、大勢の男子が、憧れているＡ子さんの声があった。
僕は、ますます出られなくなった。
どうしようと思いつつも、自然に彼女たちの話が耳に入ってきた。
「私、便秘でさあ、ＯＯＯ、出ないんだようー、ふんばってもー」
「おならばっかり、出ちゃってさあ」・・・（まだまだ続く）・・・
・・・その声は、まぎれもなく、みんなが憧れているＡ子さんの声だった。
僕は、女の子の本当の姿を見たような気がした。
普段の彼女からは、想像もできなかった。
僕は、彼女たちの話が、一段落すると、急いで、戸を開け、
わき目もふらず、一目散にトイレを走り抜けた。
走っている時、もう一つのトイレの戸が開く音を聞いた。
この後、この出来事について、触れる女の子は誰もいなかった。
Ａ子さんは、相変わらず上品で、美しく、男子の憧れの的だった。