小学校の時、唯一、もらった賞状がある。絵でもらった賞状だ。

あの頃は、うれしくて、よく賞状をしまったタンスの引き出しを何度も覗いた。

その賞状は「狐ヶ崎ヤングランド」という、今はもうない遊園地の写生大会でもらった賞状だ。

でも、僕は絵を描くのがとても苦手だった。

その僕が、どうして絵で賞状をもらうことができたと思う？

　思い起こせば僕は、すでに幼稚園のときから、絵が嫌いだった。

幼稚園の年少のとき、母の日で、お母さんの顔を描いたことがあった。

ところが、その絵を見た母親は、ものすごい剣幕で怒った。

「どうして、目が一つしかないの！」

僕は、母の顔を横から描いたつもりだったが、

うまく説明できず、母も、それがわからなかった。

（たぶん横から描いたようにも見えなかった絵だったと思う。）

でも、その出来事は、僕の絵嫌いを決定的にした。

　絵を描いても学校でも家でも誉められることはなかった。

（中２のとき、書き初めでは、誉められた。）

　では、そんな僕が、なぜ賞状をもらうことができたと思う？

参加賞だったから？いいえ、れっきとした賞状です。

その答えは・・・・・・。

　実は、写生大会のあった日曜日、台風が近づいていた。

そのため参加者が、ほとんどいなかったのだ！

実際、お昼前から大雨になった。

　でも僕は屋根の下で一生懸命に作品を完成させ、本部に届けた。

それから２週間後、教室で担任の先生を通して、賞状をもらった。

それが最初で最後の、絵でもらった唯一の賞状。

そのことを学んだ写生大会だった。