彼との出会いは鮮烈だった。
「先生、おれ将来、暴走になるんだ!」
小学校5年の彼は、がっちりした体をしていて、随分腕っ節が強かった。
彼は、その頃流行っていた「北斗の拳」というアニメが大好きで、
私にも、自慢の二の腕の筋肉をよく見せてくれた。
「髪には、剃りこみを入れて、バシッと決めるんだ!」
彼は教室では、随分派手な立ち回りを演じているらしかった。
私も、ブルースリー、ジャッキーチェーン、ジェットリーなどのアクションものが大好きだった。
そんなことからか、時々彼の勉強を見てやることがあった。
あれから10年がたった。
そして昨日、再び彼に出会ったのである。
「あっ、先生ー、久しぶりっス。」
「えっ?」
そこには髪を伸ばし、今時の若者に成長した彼がいた。
「ひろしです。」
「おーう、なつかしいなあ。」
私は、当時のことを思い出し、色々話しかけた。
「・・・・・・そういえば、バイク好きだったね。乗ってる?」
「もちろんっス。見てください。俺の単車!」
そういうと彼は、近くに置いてあった真っ赤なバイクを指さした。
「えっー!」
私は驚いた。
「これって・・・・・・。」
「そうっス。俺、実は郵便局に勤めているんです。」
「うっそー!?」
「ほんとうっス。」
話を聞くと、中学校を卒業した彼は、その後、高校へも行き、
高校を卒業し、郵便局へ就職したとのことだった。
「俺、バイク好きっスから。」
彼の笑顔は、私の心にさわやかな風を吹き込んだ。
やっぱり教師という職業はいいっス。