ヒヨドリの子、日本平へ行く
1学期の終業式の土曜日。靴箱で握手をし、クラスの子どもたちを見送った後のことだ。
「先生、見てください！」他のクラスの５年生が来た。
その子の手のひらには、小さな子鳥がうずくまっていた。
どうやらヒヨドリの子どものようだ。
「どうしたの？」
「運動場の森に落ちていたんです。今、お腹に消毒をぬってもらいました。」
見ると、お腹から出血していた。モズにやられたのかもしれない。
「この後、どうしたらいいですか？］
私は、返答に困った。外見では、けがの程度がわからないからである。
そこをたまたま通りかかったＳ先生。
「日本平動物園に連絡してみたら。」
時間は１２時１０分。私は少しあせった。
なぜなら、これから職員旅行で箱根へ行くからだ。
急いで子どもたちにダンボール箱を用意させ、そこに枯草を敷き、子鳥をのせた。
そらから、すぐ日本平動物園に電話をかけた。
「はい、こちら日本平動物園です。」
私は、状況を説明した。それから言った。
「今から伺ってもいいですか。見てくださいますか？」
昼食の時間であったが、思い切ってきいてみた。
「いいですよ。」
快く応えてくれた。それがうれしかった。
子どもたちには今から動物園へ連れて行くことを説明し、再び１時に学校で待ち合わせをすることにした。
車をとばし、動物園へ着いた。有料駐車場の入り口で係の人に聞いた。
「けがをした子鳥を診てもらおうときたのですが・・・」
「聞いてますよ。ここを左に入って直接事務所へ行って下さい。」
「ありがとうございます！」
到着すると、私はダンボール箱を抱えて、中へ入った。
「どう、見せてください。」
担当者と思われる人が、ダンボール箱を覗いた。
「だいじょうぶでしょうか？」私は尋ねた。
「よく見ないとわかりませんからね。レントゲンを撮るなどしますから、こちらで預かっていいですか。」
「よろしくお願いします。」
「では、こちらの書類に記入してください。」
「治ったら、どうなるんですか。」
「こちらの方で、自然へ返してやりますよ。」
「よろしくお願いします！」
こうして、私は学校へもどり、子どもたちに事情を説明した。
箱根に向かうマイクロバスの中で「氷結果汁」を飲みながら、気分爽快だった。
元へ戻る