「俺、結婚することになったから、結婚式に来てほしいんだ。」

　中学校時代の友人から電話が入ったのは、昨年の１２月。

　「５月の第３土曜日なんだけど、大丈夫？もし都合が悪かったら、今から日にちを変えるから。それとホテルの宿泊も取っておくよ。」

　「なに言ってんだよ。Ｔの結婚式なら、いつだって喜んで出席させてもらうよ！」

　こんなに気を遣ってもらって、とてもうれしかった。（這ってでも行くぞ！）と決意を新たにした。

　　こうして、予定通り５月の第３土曜日に結婚式と披露宴が、東京の「品川パシフィックホテル」で行われることになった。

　しかし４月１日。職員会議で提案された予定を見て、焦った。５月の第３土曜日は、「参観日」になっていた。

　「まずい。結婚式は、何時からだっきか？」　案内状を見てみた。

　１２時３０分。無理だ。残念ながら結婚式には参加できない。披露宴は・・・午後２時からか。これならギリギリ間に合うかも。

　　４月の下旬、金沢に住むＭから連絡が入った。

　「おい、俺たちの出し物どうするんだよ。Ｔは俺たち二人に一番期待してるんだぞ。出席者も１５０人もいるから、しっかりやらないとな。」

　こうして、ゴールデンウイークに曲の選考をし、振り付けと衣装の準備をした。

　曲は、Ｔが大好きなサザンで、式場のホテルにちなみ「ホテルパシフィック」に決定。

　さっそく茅ヶ崎ライブのビデオを友人から借り、二人で振り付けの練習をした。

　衣装は藤枝まで買いに行った。総額一人一万円。見た目はピンクレディだった。

　振り付けで覚えきれない部分は、当日の披露宴までに覚えてくることとなった。

　 　さて、当日。

　参観会が終わると同時に、急いでタクシーで駅へ向かい、新幹線に乗った。

　品川駅に１時５０分に着いた。あと10分。僕は急いで、会場へ向かった。

　１時57分、会場に到着。みんな披露宴会場へ入っていくところだった。

　「よかったー。間に合ったー。」　僕は、ほっとした。

　定刻通り２時から披露宴が始まった。祝辞が続いた。ぼくらの出番はどうやら３時すぎになるらしい。

　３時になると、いよいよ準備のため、衣装室へ向かい、着替えを始めた。

　そこでリハーサルを始めた。

　礼服の下に衣装を着て、お祝いの言葉を言った後、

　 　おもむろに礼服を脱ぎ始め、出だしのポーズをとり、歌い始めるのである。

　キラキラした派手な衣装は、衣装室の着付け係の女性陣に大受けだった。

　「僕ら今から出番だから、見にきてね！」

　こう言って、僕ら二人は、ロビーを泳ぐようにして披露宴会場へ向かった。

　出し物は大受けだった。練習の甲斐があった。

　その時の新郎と僕らは、中３の頃と同じぐらい輝いていた。

　その後、いろいろな人からお酒を注がれ、僕はつぶれてしまった。

　超忙しくて、めちゃめちゃ疲れた一日だったけれど、思い出に残る一日となった。